「触れたい」
「居ないはずの者を見つめるその虚ろなまなざし、嫌いじゃない」
「アダムはイヴから生まれる」
「そうさ」
「もう一度あの肌に、あの身体に」
「アンタは喉にリンゴをつっかえさせてしまったのさ 毎晩指折り捧げる祈りは性への呪い」
「滑稽極まりないな」
「それがアンタら人間ってやつじゃないか」
「なんて単純で浅はかな存在なのだろう」
「君はそんな細胞の集合体に魅入られた」
「射精だって操れる」
「命なんて操れる」
「脊髄、脳」
「心臓なんて二の次さ」
「橙色の血漿と青い血液がうまいこと分離、マーブリングになっていて吐き気を催します、かあさん」
「気持ち悪い、気持ち悪い。笑える」
「◯年×月△日 鉛のような重みのある太陽光が今日も俺のベッドに降り注ぐ、そんな台風、大荒れ。」
「かあさんと得体のしれないモノを試飲。」
「その翌日、どうやら昨日飲んだ物体がダメだったらしく視界に火花が散っている。眩暈、吐き気、悪寒。」
「◯年×月△日、異世界への穴を見つける。それは大きさも手触りも、まるで女性の外性器のようだった。」
「なんと、様々な細菌が肉眼で視認できる」
「柔らかい肉壁が俺を捕らえる。 ……この透明な粘度のある液体は…?」
「冗談も大概にしてほしい。俺は膣内に似た通路を肉に挟まれながら進んだ。」
「◯年×月△日、おかしい。俺は確実に非現実的な空間にいたはずだ、服も眼鏡もトロトロとした液体でひどいことになっている。 ……ここは俺の部屋のベッドの上」
「…? 机の上にあったはずのかあさんの写真がなくなっている」
「何だ、これは悪い夢か、早く覚めろ」
「部屋の窓の外からホイッスルかやらドラムやらの音が騒がしく聞こえてくる。何だこれは」
「タイムリミット?一体なんのことだ」
灰色、鈍色、あの世色。
かあさんは椿の花のような。
ああ、かあさん。首が無くなっている
毛細血管のような空
あいの印 あいの色 見て、かあさん あなたに、そっくりだ
わかい僕の胸に収まるきれいな色をしたこのポンプ
僕が涙を流せば 僕が血を流せば 色づいてゆく あなた
あいとは痛みか、痛みがあいか、だとするなら僕は この身が滅びようとも
「追悼」
かあさん、僕は
今、あいにいきます
さて、この僕こと英一郎は人間を辞めるに至ったわけだが。
まったく、勝手な事をしてくれる
おい英一郎、かあさんにあいたがるのはなにもおかしいことではないぞ。
うるさい英一郎、マザコンを認めるのか。
黙れ英一郎、紛う事なきマザコンだろ好い加減にしろ。
あの青い空の向こうに、かあさんの色をみた
様々な生命がまぶたをおろし始める頃、かあさんは綺麗な青色を侵食 鮮やかに染めていく
幼いながらも俺の計画は完璧だったよ、完璧だった。完璧だったが
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